秋の蝶日の有うちに消うせる
鈴むしの鳴やころころと露の玉
すゞむしや手あらひするも蒔絵もの
寒き声や敷居をく ゞれきりぎりす
琴爪を礫にうつやきりぎりす
暁や雨も頻にむしの声
くつは虫いつかはかなきしもの声
しづけしや鶴に定るあきの雲
あら浪や波を離れて秋のくも
秋寒し日蔭のかづら袖につく
椎の実の板屋を走る夜寒哉
海近き雨や夜寒の濡むしろ
秋の色野中の杭のによひと立
あきのゝやはや荒駒のかけやぶり
雨三粒降て人顕るゝあきの山
雨はやし松茸山のすてか ゞり
おくれ馳に魚さげゆかむ菌山
八朔や旅は寐がちにもの忘れ
蜀黍の穂首になびけ三日の月
けふの月雲井の竜よ心あれ
月と我と物おもふ頃雲おこる
大かたは美女なりけらし月のまヘ
夕がほも地に見えて月の今宵哉
月満て芙蓉の花のすわりけり
人遠く水長うしてけふの月