和歌と俳句

山口誓子

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衰へし蟋蟀に燈の明るさよ

ひややけく家居はなりぬ燕去る

自転車を乗り習ふうち秋の暮

今晩は今晩は秋の夜の漁村

吾亦紅真紅なるとき銃の音

吾亦紅立つて野の川混濁す

秋の海蒼を川にも遡らしめ

機関車に助手穂芒を弄ぶ

椎の実のつぶつぶ神の溝の上

街道に鳥居をくぐる甘藷車

秋の暮金星なほもひとつぼし

鰯雲攀づべからざる嶽の上

天覆ふ鰯雲あり放心す

秋の暮真黒き獣道塞ぐ

牛の眼の繋がれて見る秋の暮

秋の暮山脈いづこへか帰る