和歌と俳句

稲雀

夕栄に起ちさざめけり稲雀 草城

追ふ声のあはれに暮るれ稲雀 草城

稲すずめ大菩薩嶺はひるかすむ 蛇笏

出発つや疾風の如く稲雀 波郷

稲雀追ふ人もなく喧しき 虚子

稲雀汽車に追はれてああ抜かる 誓子

稲雀更に微塵となり距つ 誓子

稲雀児に叫ばれてかへしけり 誓子

中空を好んでわたる稲雀 誓子

稲雀とんでにぢれて雀色 誓子

稲雀群を進むること迅し 誓子

稲雀にも夕暮や人恋し 汀女

稲雀五重の塔を出発す 三鬼

稲雀笑いさざめく朝日の樹 三鬼

稲すずめ森ごもり鳴くすさまじき 爽雨