和歌と俳句

飯田蛇笏

白嶽

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韃靼は海もりあがりの旅

白鴎に春の潮渦出ては消ゆ

あるときは春潮の鴎真一文字

かもめとぶ春の砂丘に海の紺

春鴎に水玉濤をはしりけり

旅終へてまた雲にすむ暮春かな

日は宙に春の天壇ねむるさま

おほみそら瑠璃南無南無と年新た

しぬばかりよきゆめをみてはつかがみ

大富士のすそ野の新墾鍬はじめ

葉牡丹に年立つあられ降りやみぬ

繭玉の鏡にひびく光りあり

しめかざりして谷とほき瀑の神

観潮の娘が手甲も春の旅

野火の雨切株はやくぬれにけり

野火煙り匐ひ消ゆる水せせらげり

小野をゆく靴になじみて青き踏む

軍鶏籠にながるる蕗の穂絮かな

雪解風禽は古巣をかへりみず

禽は地をあさりて瑞枝東風吹けり

春嶺とほき奥のけむりをわびにけり

高原のみちゆく母子雲雀啼く

生ふうね土温くく踏まれけり

風に映え泉におそき山ざくら

たかんなや山草しげきかなたにも