かりがねのきのふの夕とわかちなし
かりがねやのこるものみな美しき
鶏頭に隠るる如し昼の酒
秋風の吹くこそ楽し酒の中
鶏頭の夜を照らされて常ならね
芋の秋七番日記読み得るや
出発つや疾風の如く稲雀
夕富士をみつむる顔や秋の風
秋の夜のオリオン低し胸の上
朝寒の鷺の小膝の水皺かな
白露の山河ことごとく別るなり
輸送車のとまる萩咲きさだまりぬ
葛咲くや父母は見ずて征果てむ
海の日や葛の陸山露燦と
露寒や罎をさげゆくただの人
秋晴や御勅論誦す貨車の中
水色は発破かけてる秋のくれ
朝霧に勵家は何の鐡を打つ
秋晴の麺麭食こぼす膝あはれ
秋風や夢の如くに棗の実
朝顔に風も吹かずよ草の中
朝寒の月暈きたり榮あれや