和歌と俳句

種田山頭火

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うら山は墓が見えるかなかな

かなかなゆふ飯がおそい山の宿

朝の水音のかなかな

はるかにかなかなの山の明けたいろ

岩ばしる水をわたれば観世音立たせたまふ

住めば住まれる掘立小屋も唐黍のうれてゐる

萩にさき山蟻のゆきき

坑口から出てきてつまぐりの咲いてゐる家

かるかや、そのなかのつりがねさう

あすは二百十日の鴉がたたかうてゐる

山桐のかたまつて実となつてゐる

この山里にも泊るところはあるかなかな

制札にとんぼとまつてゐる西日

日ざかりの石ころにとんぼがふたつ

月が風が何もない空

腹いつぱいの月が出てゐる

灯に灯が、海峡の月冴えてくる

しらなみ、ゆうゆうと汽船がとほる

波音の霽れてくるつくつくぼうし

陽がとどけば草のなかにてほほづきの赤さ

つくつくぼうしもせつなくないてなきやんだ

草ふかく木の実のおちたる音のしづか

法衣のやぶれも秋めいた道が遠くて