和歌と俳句

早苗 さなえ

提灯にあかつき近し早苗取 月二郎

笠のはし水につけつけ早苗とる 虚子

早苗とる水うらうらと笠のうち 虚子

蝦夷近き雨雲渡る早苗かな 水巴

早苗とる一人きりなる音をたて たかし

みちのくの早苗短き萌黄かな 風生

出征標古りぬ門川早苗流れ 青邨

おくれゐし門辺の早苗植ゑすめり 久女

早苗水走り流るる籬に沿ひ 久女

早苗束投げしところに起直り 久女

早苗束二つ投げられ受けとれず 素十

いつまでも一つ郭公早苗取 素十

馬鹿家鴨流れて早苗矢のごとし 茅舎

早苗田に垣も映れり家も映れり 

みちのべや早苗おかれしあと濡れて 蕪城

道に立ち見てゐる人に早苗とる 虚子

笠二つうなづき合ひて早苗とる 虚子

けふは見る庄内覆面早苗取 青邨

早苗束毬藻の如く浮みたり 立子

甲斐駒の雲に雷をり早苗採 秋櫻子

徒渉る早苗運びや千曲川 秋櫻子

肱川や流れそめしは早苗屑 悌二郎

早苗挿す早さ烈しさ身近さよ 静塔

長雨や篠にかこまれ早苗挿す 静塔

苗場とて潔めし早苗そよぎをり 秋櫻子

早苗投ぐ青の塊飛んでゆく 誓子

吾が投げし早苗の束はみな倒る 誓子

今植ゑし早苗は毛なり青毛なり 誓子

早苗挿す一本づつに願籠め 誓子