和歌と俳句

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遅月にまぎれて飛べる蛍かな 麦南

うつつなく昼の蛍は蚕屋に匐ふ 楸邨

波ゆけば浮葉にともる蛍かな 楸邨

大橋小橋、最後のバスも通つてしまつて蛍 山頭火

若きひと死んで哀しき蛍かな 万太郎

蛍火やこぼりと音す水の渦 青邨

瀬の音のうすくきこゆる蛍かな 万太郎

紫陽花をはなれし昼の蛍あり 秋櫻子

手長鰕つる手に昼の蛍来る 秋櫻子

蛍来て畳にひかりともしけり 波津女

蛍死しあさひはたかくのぼりけり 波津女

蛍火のついと離れし葉末哉 鳳作

蛍の灯るを待ちて畦歩く 鳳作

蛍のやがて葉裏に廻りたる 鳳作

茂吉
ゆふ闇の 空をとほりて いづべなる 水にかもゆく 一つ蛍は

蠱の火の生きて這ひける蛍かな 淡路女

蛍火をとり落したる青さかな 淡路女

蛍火の静かに消ゆる愁ひかな 淡路女

手の蛍にほひ少年ねむる昼 三鬼

蛍火と天なる星と掌をこぼれ 誓子

蛍火に天蓋の星うつり去り 誓子

ほたる這ふわがねやの戸に戻りけり 石鼎

蛍火に象牙の如き杭ぜかな 茅舎

蛍火に水晶の杭ぎつしりと 茅舎

明滅のいづれ悲しき蛍かな 茅舎

叢にかたまり落つる蛍あり 立子

ほうたるを放ちし庭の明けにけり 耕衣