和歌と俳句

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子がたてりこの野の蛍掌にとぼし 多佳子

蛍火が掌をもれひとをくらくする 多佳子

ふわふわと蛍火太く息づきぬ 茅舎

蛍火に多摩の横山眉引ける 茅舎

蛍火に真菰は髪の濃ゆさかな 茅舎

多摩の月妙にも蛍火を点じ 茅舎

月光に蛍雫のごとくなり 茅舎

瀧霧にほたる火沁みてながれけり 蛇笏

ほうたるや袂にひとつ得てかへる 

蛍高し筑紫次郎は闇にひそみ 茅舎

渡し来る一点の灯と蛍火と 茅舎

きんいろの月の大空につと蛍 石鼎

蛍火の鋭どき杭ぜ燃やしけり 茅舎

蛍火に幻の手を差し出しぬ 茅舎

ふれし手に葉をこぼれたる蛍かな 占魚

うすうすとしきりに月の蛍とぶ 花蓑

蛍火をふところに男二十かな 欣一

庭蛍出でて飛ぶ戸を母鎖さる 汀女

ほたる火や馬鈴薯の花ぬるる夜を 蛇笏

ほたる火のくぐりこぼるる八重むぐら 蛇笏

海のかたへ消えてゆきたる蛍かな 万太郎

雲凝りし明神岳やとぶ蛍 秋櫻子

宵の雨蛍のともる頃をやむ 波津女

親一人子一人蛍光りけり 万太郎

町の川鉄管ともす蛍ゐて 誓子

蛍獲し子に蛍かと問うて寄る 誓子

蛍火や白き夜道も行路難 草田男

蛍火の砂に落ちたる海の浜 誓子

大いなる蛍の闇に細き道 立子

石に居て水に映れる蛍かな 杞陽