和歌と俳句

及川 貞

  • 新年
  • ピアノの灯新樹の雨に誕生日

    青葉木菟ひしどにきけばなほ近く

    香を焚き簀戸くる風に朝茶くむ

    端居して読みがたし戦場のたよりなり

    すいと来ぬ今宵は灯蛾のみなちさく

    初蚊帳寝ね臥すときは更けしとき

    ほうたるや袂にひとつ得てかへる

    萩の門あけよあろじの英霊に

    雷打ちて灯絶えてありぬ蛾の羽音

    郭公やあまりに近くきけば立つ

    郭公や梅雨ぞらのまゝ暮れてゆく

    庭にきく郭公海へやるたより

    あさの客泰山木を挿してまつ

    灯虫掃き寝るときさそり星のあり

    蚊火足して若者ばかり泊り客

    井戸汲みて撒きておのれが汗涼し

    帯かたく扇子あたらし子と街へ

    ばらが咲く五月よ切に子を惜しむ

    ちまき子に夫に供へ気が済んで

    袖かろし夏めく水仕はげまされ