和歌と俳句

原 石鼎

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すずかぜにとぶ虫ばかり日の盛

枇杷熟れて穂麦もうれて日盛りぬ

日盛の天心地気とかよひけり

日盛の雲翳庭をよぎりけり

曇りつつ光る葉の面も日の盛

さかさまに匐ふ赤蜂や日の盛

日盛りて眼にいちさきの枝楓

なつかしや真夏の空の夕やけも

幼どきかへりしごとし夏の雲

夏の寺涙も遠み詣でけん

葉桜を吹く風幹をつつみたる

朝起きの嫩葉の露もながめかな

宵に昏く暁にしづけき朴の花

黒雲や泰山木の花に風

泰山木おほやまれんげ朴の花

南にあけぼの色や明けやすき

明易やをさのごとく蚊帳の中

亀の子の真菰に添うて泳ぎけり

葉と落ちし蝸牛幹をのぼるなり

ほたる這ふわがねやの戸に戻りけり

両岸は巌壁にして鵜飼かな

巌が根をこがしてはゆく鵜船かな

桑畠を潜り出て観る鵜飼かな

小舎の鵜に月の浄土の夢やあらむ

夕やけの中に蚊帳つるふしどかな