和歌と俳句

原 石鼎

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かやをつる吊手つくりぬ窓若葉

大桜若葉してふるき枝見ゆる

短夜の明けてなほ灯くともしかな

あかね雲西に東に明易き

明易く大いなる星と鎌月と

短夜の夜半の月ぞも夜半ながし

黄高く咲く何花の明易き

短夜の小風も添うて暁け雀

短夜の明けちかみひそと月の暈

明けばやの大煙突にうす煙

雲ながらかなかな短夜を啼ける

しののめの雲に陽にじみ明易き

短夜の永々し外は浄土なる

短夜の三たびもめざめ暁遠し

月の暈いつしか消えて明易き

けふよりのみどりの蚊帳の環おもし

地震ふるや蚊帳かたはづし星と居る

蚊帳に寝て昼ながかりしおもひかな

ふる蚊帳の中のあまりに月清し

かけそむる月の三たびも蚊帳涼し

眼さむるや燦として蚊帳の朝日かな

高窓に蚊帳見えて星天にみつ

蚤取粉ふりたてぬ月の蚊帳のうち

金の月へ遠き蝙蝠とんで消ゆ

地震ふるや星夜の窓と大南風に