和歌と俳句

原 石鼎

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真昼の蛾玻璃戸へかよふ夏の草

向ふがはの葉に風みゆる梧桐かな

青桐の朱の土用芽に夕日かな

月をあびて風にもまるる梧桐かな

夏草やまがたらの葉もくさのかず

はりついて蛾居る玻璃戸や夏の草

この巌壁とたたく旅人や苔の花

去がてにつと見し井辺や苔の花

ものに落ちてものに浮き居り竹落葉

水無月の人はいとしも汗を拭く

大揚羽篠のはざまを越えこえて

日ねもすを鳶のきげんや夏の風

一点の雲無くなんと蝉に風

部屋いまだ冬のままなる若葉かな

暖炉しまふやTUBE真白に若葉窓

日くもりす若葉の風もなつかしく

よそほへる若葉にわかき都かな

若竹を擦つてびろうどの鳳蝶かな

真夏ふとうす墨蝶と黄金蝶

葉桜の繁り枝のべし屋敷かな

葉桜の二枝のなかをのぼる月

葉桜の葉にかかりつつ月明し

葉の色の蒸しあがりたるかな

結ひし藺のつよくぬれゐるかな

一本の篠若竹に薄暑かな

風あふちて広葉かさんる薄暑かな