峡とほく雲ぬく峯や日の盛り 蛇笏
白秋
砲車隊 駛る夏野の 日のさかり 遠ざかり遠ざかり 立つ後埃
白秋
たぼたぼと 蛙混み合ふ 日のさかり 田岸は白き 虎の尾のはな
白秋
日ざかりの 田中の黝き ひとつ松 夏はけはひに 闌けにつつあり
白秋
日のさかり 暑さ堪へゆく 田のへりは 桑の實黒く 忍冬の花
日ざかりの一つうちたる時計かな 万太郎
深大寺蕎麦の日ざかりありにけり 万太郎
日盛蝶飛んでゐる森の中 青邨
煉瓦はこぶ背に日ざかりの波翳す 麦南
日ざかりの風山萩にたはむれぬ 麦南
日ざかり、われとわがあたまを剃り 山頭火
日ざかりのお地蔵さまの顔がにこにこ 山頭火
宇治橋の日盛時をわたりけり 石鼎
日盛の空を航くもののとどろきよ 草城
日ざかりの列車武蔵野深くあり 源義
市ヶ谷へ浅草遠し日のさかり 万太郎
日盛の影を落し子と二人 草城
日盛の汚れし鶴と写生子と 茅舎
日ざかりや廂にのぼるかぶと虫 犀星
日盛の天心地気とかよひけり 石鼎
日盛の雲翳庭をよぎりけり 石鼎
曇りつつ光る葉の面も日の盛 石鼎
さかさまに匐ふ赤蜂や日の盛 石鼎
日盛りて眼にいちさきの枝楓 石鼎
どの幹もどの枝も日の盛りかな 石鼎
日盛りは今ぞと思ふ書に対す 虚子
日盛りや時打つ余韻時計の中 草田男
日盛りに出世有縁の狆の顔 草田男
日盛りや思ひを断ちて思ふこと 誓子
待たれずに箋分ち読む日の盛り 誓子