和歌と俳句

種田山頭火

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其中一人として炎天

青田いちめんの長い汽車が通る

炎天かくすところなく水のながれくる

ふるさとちかく住みついて雲の峰

日ざかりのお地蔵さまの顔がにこにこ

もいでたべても茄子がトマトがなんぼでも

炎天の虫をとらへては命をつなぐ

重荷おろすやよしきりのなく

吸はねばならない血を吸うて殺された

とまればたたかれるのとびまはり

月あかり蜘蛛の大きい影があるく

水が米つく青葉ふかくもアンテナ

合歓の花おもひでが夢のやうに

はしたたる鉄鉢をささげ

鉄鉢の暑さをいただく

よ、私は私の寝床を持つてゐる

山は青葉の、青葉の奥の鐘が鳴る

蝉しぐれここもかしこも水が米つく

山からあふれる水の底にはところてん

御馳走すつかりこしらへて待つ蜩

道筋はおまつりの水うつてあるかなかな

うらは蜩の、なんとよい風呂かげん

かなかな、かなかな、おまつりの夜があける

ほととぎす解けないものがある

おのが影のまつすぐなるを踏んでゆく