帯解きていでしつかれや蛍かご
夏帯に折りてしまひしはがきかな
きちかうは秋咲くものの青すだれ
青簾たまたま月のなき夜にて
五月富士砂山かげにみゆるかな
深川の出水のうはさや雲の峰
いたづらにそよぐ柳や雲の峰
枝豆のうでそこなひや冷奴
水中花咲かせしまひし淋しさよ
市ヶ谷へ浅草遠し日のさかり
更衣鏡のなかにうつるもの
菖蒲湯のあけてありたる湯殿の戸
ふりいでし薄暑の雨のあかるしや
苗売の来そめし空のひかりかな
寺の門出て苗売に逢へりけり
苗売の来そめて祭来りけり
がぶがぶとサイダのみたる祭かな
提灯のともりそめたる祭かな
おもふさまふりてあがりし祭かな
年々に空地へりゆく祭かな
筍をむくなり朝日さすなかに
今日のこと今日すぐわする桐の花
麦の穂によせて哀しきおもひかな
砂みちのどこまでつづく穂麦かな
浪すこし高くなりぬる穂麦かな