和歌と俳句

日盛り

人休み機械働く日の盛り 風生

何事もなかりし如き日盛なり 草田男

日盛りや脚老い立てる一羽鶴 多佳子

日盛を盆提灯の売れてゆく 汀女

日盛りの日陰暗さや松の幹 石鼎

古蔵の香を忘れ去る日の盛り 蛇笏

遠山で法螺の貝鳴り江は日盛 草田男

日盛の江の対岸の乳房二つ 草田男

艪の音なし日盛り母の声もなし 草田男

湯に仰ぎみる日盛りの翼あり 龍太

日盛りの中空が濃し空の胸 草田男

力無きあくび連発日の盛り 虚子

日ざかりや簾かすめし蝶のかげ 万太郎

揖斐川に波のかげなし日のさかり 万太郎

牧夫来て馬首叩く音日の盛り 草田男

城は日盛山市あらはやポプラ越し 草田男

長命寺裏の日盛り梅酒のむ 波郷

日盛りはたらく黒髪護りて黒リボン 草田男

湯を出て水に豆腐屋の豆日の盛り 草田男

日盛りや鋼光りに山の湖 風生

日の盛中堂の燈はとほきもの 青畝

日盛りのくらき渡舟に僧侶の子 双魚