日の大樹目ざめの高みほととぎす
ほととぎす牡丹の数を口早に
鄙言葉「散りんたちりんた」緋牡丹が
おふくろ捨てて女房拾うて寒鴉
はるかの白衣を基督と識りルオーの秋
白鳥や虔しきもの雨後の水
都電に乗る梅雨の巷のしたしさに
山葵田や礫の条理に芽吹きたる
泉中水湧く水玉もぶれあひ
高き屋にのぼる端居も友が許
復活祭木叢が花に咲けば白
日盛りはたらく黒髪護りて黒リボン
盆中日雲の掌夕日載せて
またたきまたたき論鋒澄みくるよ汗の妻
湯を出て水に豆腐屋の豆日の盛り
頭をつつき返しあふなど仔燕等
遊ぶかに蚊のとびわたり濃きミルク
昼花火雨窪多き大谷石
山女魚の尾ランプの舌の平らかに
気は若からず心が若し夏の月
蝙蝠や父の洗濯ばたりばたり
翅裾だけを展くカナリヤ秋のけはひ
底石より清水のあやのさはにして
熱帯魚薄き身吊り上げ吊り上げて
坂上るを断念せし老赤蜻蛉