海苔干場けふ海苔のなき影しろじろ
冬の鳶父を勢はす木場娘
星は月の前衛後衛枯桜
老婆掃く己が足袋の上掃き勝ちに
くすぐるごとき哀歓の雪降り初めぬ
紅き実は滑らかいまだ雪積まず
折々や渦の真中に雪墜つる
面影迫りて祈るほかなし面打つ雪
我が死苦は重かれ雪のみ清浄なる
詩作亦受恩の償ひ針供養
雪中梅雪にかくれぬ首花眼前
雪中梅雪中鶯も在り得たり
山葵田花咲き流るる女人の感動詞
伴れ犬にいつか躓く犬山開き
耕馬疲れぬ顔のみ大きな馬なれば
行きずりの初午末子へ加護祈る
セーラー姿もう今年だけ紫雲英風
中年の麗女の多さ家ざくら
楽の音は花に安んじ火に躍る
はぢらひ顔の花の宵月人得つつ
松籟なき夜鳥の帰路や花と月
町角は白壁づくし花月夜
月が消す花の朱また灯が与ふ
花の月待ちしかに友即答す
麦生無量の端を仰ぎつつ切通し