冬幹や目なれしものに母の肌
小春の蠅首級くるりと廻し拭く
冬日の鉄壁ただねんごろに鋲多く
ひとを隔ての「見えざる壁」や芙蓉の実
雲見る雀収果の後の林檎の木
木守林檎轆轤は土の玉まはす
母の店へ来る客仰ぎ日向ぼこ
「胡麻撒り煎餅」落ちて平らに暮の土
白き靴ベラ旅しばしばの年暮るる
こぼれガソリン自ら乾き冬日うすし
「縁の下の力持ち」と卜せられたる初笑
羽子板の割れて半ばの何に似たる
年に一度はものに臆すな嫁が君
天へ高き磴又磴へ干布団
急坂半ば手袋拾ひ易かりし
一物無し冬のまぶしさそこ罩めて
枯野測量二人呼応は嬉しげに
年頭とて鵞ペン造りてみし頃よ
光ある中妻子と歩め薄氷期
卵黄を掻き解き掻き解く冬夕焼
赤児の頬ねんねこ黒襟母へつづき
ねんねこから横目つぶらの見晴しや
千手万指のよろこび如何に梅蕾む
咽喉の脹れは甘きに似たり梅の花
道路で唱ふ月島の子や雛の店