叱りあふ如く尾長鳥等冬睦む
白鳥と柳の縁はや幾歳
父母いつしか先代や夫妻炉をひらく
女家族は紙屑多し山茶花散る
冬山幾重此の世が二重に見ゆる性
神船の二舷圧されて冬の水
何が走り何が飛ぶとも初日豊か
初鶏に先立つ隣家の母の声
音さやに家一とめぐり嫁が君
師走しづかなわが足音や人ふりむく
汝が目信じて妻となりきと声冴えつ
一望の冬海金粉打ちたしや
岸ふりむく孤礁の松や冬の濤
真向から聞く耳雪の日本犬
着ぶくれて子が可愛いといふ病
校門前の冬日のポストへ町娘
マスク一つ干しあり母娘共に忙し
山人戦後も左側通行つくづくし
ひとと逢へば笑ひ声出る達磨市
月の面広しや谷の梅照らす
掌へ甘茶を甘露の一滴に
母の日の母に活けけり果樹の花
揚雲雀ひとに追風迎へ風
節目多き棺板厚し柿若葉
春暁の屋根越す烏の声よ母よ