聖杯にただよへる血と白牡丹 蛇笏
牡丹の一弁落ちぬ俳諧史 虚子
手に挟み牡丹の面をまざと見る 誓子
鄙言葉「散りんたちりんた」緋牡丹が 草田男
門を入るすなはち牡丹ばたけにて 万太郎
牡丹咲けるその一輪をいとしめる 万太郎
牡丹いま活けをはりたる鋏かな 万太郎
一輪の牡丹の秘めし信かな 万太郎
牡丹はや散りてあとかたなかりけり 万太郎
しみ込んでゆく日緋牡丹白牡丹 立子
岨の家牡丹に大き簷潰ゆ 秋櫻子
牡丹燃え甲斐駒雲に入らんとす 秋櫻子
神さびて廂下牡丹の香ぞこもる 秋櫻子
家では犬が死ぬやも風の黒牡丹 悌二郎
拾ひ秘すは今くずほれし白牡丹 悌二郎
風雲り秘色の牡丹散つてなし 悌二郎
牡丹切るあとをただちに埋むる葉 爽雨
雨にうつ向くは遅咲き黄の牡丹 悌二郎
障子無き離れ座敷の牡丹かな 青畝
傘立つる夕雨牡丹明日を在れ 爽雨
白咲くと暗き火見ゆる白牡丹 楸邨
花了へて牡丹諸葉をそよがする 悌二郎
一週の牡丹の誇り散ってなし 悌二郎
白牡丹暮色見ゆればよそよそし 汀女
才色の才の明るき白牡丹 不死男
一弁の落ちて牡丹の神離る 静塔
大輪のゆるめば牡丹寧からず 青畝
牡丹ちる弁のゆるびにさし入る日 爽雨
一片の奇しくも遠し散牡丹 爽雨
白牡丹散りたる音は知らざりき 楸邨
白牡丹の白を窮めし光かな 風生
開帳といふ趣の牡丹かな 青畝
牡丹咲くひまひまの葉の奔流に 爽雨
かへりみて牡丹くづるるにはかさよ 汀女
一点の早蠅清浄白牡丹 青畝