開帳といふ趣の牡丹かな
微禄とはいへ誇もつ柏餅
握り飯一つのこされ水見舞
障壁の龍虎対峙し五月闇
尺取虫あてづつぽうな尺を振る
豹紋を天晴落し竹の皮
われの姓阿波のしじらの単衣を着
天牛の背を起せば紺絣
夏の山硫黄むきだし爛れたる
顔わろき石佛ら待つ山開
山寺の下も山寺蚊帳灯る
避暑地より檄をとばせば諸子来たる
青畝老ゆ梅干粥をなつかしみ
病葉のひとつの音の前後かな
露のすぢ几帳面なる芭蕉かな
台風のわが枕許蝋匂ふ
秋汐をしるべに平家物語
秋水をしぼりて岩の奈落かな
宮島の杓文字は島の案山子かな
ある僧の頭陀ぺしやんこや豊の秋
凩や大海珊瑚礁見せず
水鳥の口しやくりつつ水こぼす
水鳥の蹼菱の殻を踏む