九頭龍の石よりやさし山の薯
端近う秋の暮待つ観世音
戸隠の裾野まばらに蕎麦うつ灯
馬返しとは錦なす山のみち
一発の冬雷高し櫻島
麦を蒔く田人にやさし観世音
ツンドラに生きつづけをる枯木かな
白菜の一枚づつの白さの差
火山灰除に薩摩をとめの頬被
着膨れの破れて波止の老詩人
土不踏粉雪踏めり永平寺
雪五尺踏むすべ知らず平泉寺
彩色の観音雪を待ち給ふ
ふぶけども承陽殿はもの静
九頭竜を馳しる竜巻ふぶきけり
夢の中母の声あり老の春
福寿草襖いろはにほへとちり
寝正月世に処する道練りにけり
湯の薬師吹きさらさるる雪解かな
妙法蓮華経と谺山笑ふ
霽れしぶる吉野の雨の田螺かな
黄塵をものかは鶴の帰り去る
丹生川の曲る暗さや春の月
借りて読む伊勢物語花の中
仔馬跳んで雀斑乙女に甘えたり