和歌と俳句

阿波野青畝

乗込の鮒の辺にして鯰釣れ

一点の早蠅清浄白牡丹

南朝の末の末とし鯉幟

流扇の名残とどめよ大堰川

水棹突く白丁老いけり三船祭

草笛や一片の葉を以て足る

天王寺さんは大寺明易し

一つ葉に一つのあるじ蝸牛

を叩き墨汁一滴よごしたり

うたかたが粘る鰻の暑さかな

団扇ひらひらつかひつ曰く熱帯夜

美しき漆器をひさぐ登山口

鉄心を鍛へよ滝の一行者

風鈴の紙片は杜甫の詩なるべし

赤汐を蹴立て漁舟の寧からず

赤汐はよそな沙汰なりにぎり寿司

一粒の麦を称へむ夏見舞

最上川か行きかく来て土用浪

禰宜の沓道踏み缺きし御祓かな

沙羅散りて浄土かき暮れゆきにけり

安曇野の芒も初穂早稲も初穂

一叢が竪琴なせるかな

つづれさせ高麗縁をひと跳びす

蟷螂はなびける萩の落し物