乗込の鮒の辺にして鯰釣れ
一点の早蠅清浄白牡丹
南朝の末の末とし鯉幟
流扇の名残とどめよ大堰川
水棹突く白丁老いけり三船祭
草笛や一片の葉を以て足る
天王寺さんは大寺明易し
一つ葉に一つのあるじ蝸牛
蚊を叩き墨汁一滴よごしたり
うたかたが粘る鰻の暑さかな
団扇ひらひらつかひつ曰く熱帯夜
美しき漆器をひさぐ登山口
鉄心を鍛へよ滝の一行者
風鈴の紙片は杜甫の詩なるべし
赤汐を蹴立て漁舟の寧からず
赤汐はよそな沙汰なりにぎり寿司
一粒の麦を称へむ夏見舞
禰宜の沓道踏み缺きし御祓かな
沙羅散りて浄土かき暮れゆきにけり
安曇野の芒も初穂早稲も初穂
一叢が竪琴なせる芒かな
つづれさせ高麗縁をひと跳びす
蟷螂はなびける萩の落し物