彩色の淡きを好む老の春
宮司様もまれて十日戎かな
若水に奈良井の宿の杓卸す
年越すと諸仏鬼神に灯を献ず
裏がへる春の落葉の堅さかな
びるばくしや鬼踏まへ春立ちにけり
涅槃図に和田のうろくづ描かれず
踏青の戦没の丘たのしまず
乗込の鮒にしのつく淀の雨
海女の桶鮑べたべた吸ひつけり
灌佛や生老病死減ることなし
子燕は太魯閤の壁に翔び習ふ
代馬の前のめりしぬ浅間晴
秀衡の桜の春は去りにけり
海は夏摩文仁の砦ふしあはせ
芍薬や丹波の壺のざらざらと
夏潮に赤間の宮は赤かつし
羅漢寺は壺中の寺や夏の山
とくとくの清水は左右の手を洩るる
土用浪うねりに壱岐を乗せにけり
夕凪やぽつんぽつんと壱岐の牛
盆花のお地蔵汐に立ちたまふ
赤のまま天平雲は天のもの
銅鑼止めば船なくなりし夜長かな