和歌と俳句

阿波野青畝

むささびの落ちつき得ざる良夜かな

飛倉の信貴しづまりし良夜かな

泣きぬれしその枕べを寝待月

落柿舎を出て影法師十三夜

落柿舎に一像一机十三夜

十二日芭蕉亡じてしぐれけり

しぐるると子安の小貝濡れにけり

松籟は颯と風花とばしけり

汐泡のしぶきをはこぶ吹雪かな

雪見舟船頭ひとり吹きさらし

雪卸す堂に両界曼荼羅図

シュプールの正しき雪の撓ありぬ

齧じられし写楽の顔や嫁ケ君

聾青畝面かぶらされ福の神

おかめ笹びしよびしよ光り雨戎

年の豆奪衣婆わらひゐる堂に

不動尊雪解のひびき知りたまふ

北近江ねはんの月の明るさよ

厩出しや吹つさらしの那須の原

イースターエッグ彩る漫画かな

大寺の大燈國師燭おぼろ

あの猫のふぐり二つや春の月

散る花をよろこび塒烏かな

花うぐひ五体投地のままに死ぬ

霧はやく行きゆく那須つつじかな

風なぶるつつじつつじや那須の原