激雷のその後青し北の海
青芝や棕櫚ふく風は別にあり
うかうかと団扇の風を貰ひゐし
玉蟲の何しるべくもなく死にし
梅雨の窓餌を欲る鳩が暗くする
滴りのしづくの伸びに刻消ゆる
風鈴の音に月明かき夜を重ね
カンヌ夕焼故国の山に似し山も
地中海夕焼も白き船も消え
泉湧く青銅古き大鉢に
白牡丹暮色見ゆればよそよそし
短夜の栞忘れし頁かな
わが使ふ扇の影が乱すもの
揚羽上り鳶舞ひ下りる若葉谷
光洩るその手の蛍貰ひけり
日傘しなふ山の風かな避暑期去る
蛍とび早寝あやしむ家もなし
つと逃げし蛍の闇のみだれかな
夕顔に立ちてわが家の暮し見ゆ
ふるさとやかぼりかぼりと打つ水も
郭公や霧また海を奪ふとき
噴水に月光しかとまじるとき
虹立ちてみないきいきと山の草