和歌と俳句

打水

水打つて前栽とみに夕づける 野風呂

水打つやみな夕とざす花圃の花 爽雨

留守もりし妻の打ちたる水としる 烏頭子

打水に濡れにぞぬるる木賊かな 石鼎

打水にはじめてきこゆ松小蝉 石鼎

吾が好きは犬と牡丹よ水を打つ 鷹女

水を打つ夕空に月白う刎ね 茅舎

いもといふ言葉をかしも水を打つ 鷹女

水打てばあちらこちらに水柱 立子

思ひ切り身体倒して水を打つ 杞陽

打水をよろめきよけて病犬 虚子

打ち水の水の飛び込む大芭蕉 たかし

木の間より飛び出す水や水を打つ たかし

打水の水の大きな塊よ 杞陽

凌霄花に夕日まだあり水を打つ 立子

隣人の水打ち呉るゝ夕されば 友二

打水のころがる玉をみて通る 蛇笏

水を打つ故郷再び離るべく 汀女

水打ちてよごせし足の美しく 汀女

水打つて広重の空はじまりぬ 楸邨

水打つて五つの石の日暮かな 楸邨

能登人や言葉少なに水を打つ 普羅

水うつやはらりはらりと柏の葉 普羅

打水や萩より落ちし子かまきり 素十

水打てけがれ入らざる門となす 

あかつきの四方のひそけさ水を打つ 草城

忘れたきことと一途に水を打つ 立子

水打つて吹鳴らしをり水鶏笛 楸邨

打水を脱れて上る埃かな 朱鳥

打水をただ仰山に市さわぐ 草田男

日本海押し迫る駅水打てり 登四郎

水を打つすなはちさしてくる日かな 万太郎

水打つやとべる子がへる孫がへる 万太郎

打水や意地で恋する前のめり 草田男

水打つてふたたび閉ざす門扉かな 汀女

水打つや一とうちづつの土ほこり 万太郎

ひと見えずして街道へ水を打つ 誓子

水打つて木曾谷の天青きこと 林火

ふるさとやかぼりかぼりと打つ水も 汀女