げに今日や祭ばんてん祭足袋
けさもまた雨うとましや麦の秋
みじか夜の奇しきは人のさだめかな
わが老の業はねむれずあけやすき
白鳥のひく水尾梅雨に入りにけり
蚊帳つるやかくてむかしの木挽町
一雨にまた逃げられし簾かな
日の二時の木のかげやどす日除かな
夏果つる萎えいちはやき日除かな
何ごとも神さままかせ瀧に佇つ
一人猪口をふくみて夏の夕かな
割りばしをわるしづごころきうりもみ
日ざかりや簾かすめし蝶のかげ
揖斐川に波のかげなし日のさかり
睡蓮の葉と葉をうかす水とかな
夜の秋の月にさがりしすだれかな
夜の秋の月のひかりをとらへけり
何か世のはかなき夏のひかりかな
日に一度いたむ胃夏に入りにけり
矢ぐるまの音にも泪おつるかな
親一人あとにのこりし蛍かな
つつましく扇つかへる涼しさよ
袴つけて羽織ただしく著て涼し
山の冷えいつか浴衣の肩にかな
水を打つすなはちさしてくる日かな
水打つやとべる子がへる孫がへる
鰺焼けてくるのを待つや冷奴
草の香におぼるる蝶や夏了る