七十七の賀の衣更へにけり
百合しろく薔薇淡紅に薄暑
夏場所やけふも土俵のあれに荒れ
夏場所やひかへぶとんの水あさぎ
梅雨はやき波よけさまのまつりかな
祭ことし揃ひの染めも上々に
そらまめのおはぐろつけし祭かな
味噌味の飴かぐはしき若葉かな
猪口にうつる若葉のかげに亡き人
あぢさゐのいろ濃きうすき宿世かな
あぢさゐの藍のやうやく濃かりけり
逢へばまた逢つた気になり蛍籠
たすきかけて雲水がせい青あらし
夕月のひかりほぐれし籐椅子かな
おもひでとともに古りたる籐椅子かな
うすものや月を見て佇つ風の中
落ちかたの月のいろみよ涼み船
月つひに落ちてしまへり涼み船
朝焼や蚊取線香の燃え残り
夕焼の消えたる風の眞菰かな
夏浅し回転椅子のよくまはり
蕎麦啜る矢車の音落つる下
山の峡はしる道みゆ若葉風
芍薬の蕊の濃き黄にさへ愁ふ