和歌と俳句

久保田万太郎

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七十七の賀の衣更へにけり

百合しろく薔薇淡紅に薄暑

夏場所やけふも土俵のあれに荒れ

夏場所やひかへぶとんの水あさぎ

梅雨はやき波よけさまのまつりかな

祭ことし揃ひの染めも上々に

そらまめのおはぐろつけし祭かな

味噌味の飴かぐはしき若葉かな

猪口にうつる若葉のかげに亡き人

あぢさゐのいろ濃きうすき宿世かな

あぢさゐの藍のやうやく濃かりけり

逢へばまた逢つた気になり蛍籠

たすきかけて雲水がせい青あらし

夕月のひかりほぐれし籐椅子かな

おもひでとともに古りたる籐椅子かな

うすものや月を見て佇つ風の中

落ちかたの月のいろみよ涼み船

月つひに落ちてしまへり涼み船

朝焼や蚊取線香の燃え残り

夕焼の消えたる風の眞菰かな

夏浅し回転椅子のよくまはり

蕎麦啜る矢車の音落つる下

山の峡はしる道みゆ若葉風

牡丹はや了りし若葉かな

芍薬の蕊の濃き黄にさへ愁ふ