はや梅雨に入りたる蓮の浮葉かな
雨の輪のふえくる蓮の浮葉かな
蕗の葉の日にあらがへる暑さかな
潮の音の来て鳴るすだれ吊りにけり
青すだれむかしむかしのはなしかな
波の音来てわが端居つつみけり
水打てと水吐いてゐる筧かな
夏潮の音よぶ雲の生れけり
帚目に熊手目に夏来りけり
大溝の水撒く夏に入りにけり
石段の雨瀧なせり更衣
人がらと芸と一つの袷かな
鯉幟牡丹ばたけにとほきかな
百合の葉の蟲みつけたる薄暑かな
伸びきはふ蔓のひかりの薄暑かな
まだ荒るる沖のあかるき薄暑かな
七時まだ日の落ちきらず柿若葉
麦刈るやまた一しきり通り雨
花菖蒲ただしく水にうつりけり
玉葱をつりても梅雨に入りにけり
梅雨の傘かたげしうしろすがたかな
ででむしにをりをり松の雫かな
よしきりや雨にぬれたるものばかり
ぬかあめに百合かたまりて濡るるかな
百合咲けるひかりのおよぶかぎりかな
干してある畳の裏や百合の花