和歌と俳句

松本たかし

木の間より飛び出す水や水を打つ

貯へておのづと古りし梅酒かな

蝉涼し絵馬の天人身を横に

月見草蛾の口づけて開くなる

月明の蛾の跳梁や月見草

影抱え蜘蛛とどまれり夜の畳

蜘蛛かなし脚つづめ死を真似るとき

山寺の翠微に浮む牡丹かな

野茨やあそぶ小蟹に花を揺り

忍冬綴れる門を久に出ず

西日落つ遠き鈴鹿に軒簾

一つ家を叩く水鶏の薄暑より

叩き寄る水鶏の門の雨夜かな

葭切の葭の青さやお城下

葭切の寝につく葭のそよそよと

月やさし葭切葭に寝しづまり

早苗田にあやめ立ち添うふ業平忌

三河女と早苗取らうよ業平忌

麦打の今夕かげる涼しからむ

薔薇の中に寝まりて若し薔薇作り

玉簾の瀧の五月雨来て見たり

玉簾の瀧の千筋のもつれなく

老鶯に我が風鈴も音をはさみ

一円に一引く注連の茅の輪かな

一円を立てて茅の輪に内外あり