和歌と俳句

高浜虚子

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月空に在りて日蔽を外しけり

日蔽の繪様やものの半なる

川向ひ皆日蔽せし温泉宿かな

昼寝客起すは茶屋の亭主かな

緑蔭清泉一人立ちたる裸かな

紅袍の下にの古びかな

著て袂に何もなかりけり

麦笛や四十の恋の合図吹く

涼しさは空に花火のある夜かな

浴衣著て老ゆるともなく坐りけり

生涯の今の心や金魚見る

恋さめて金魚の色もうつろへり

露の幹静かにの歩き居り

菖蒲葺いて元吉原のさびれやう

祭舟装ひ立てて山青し

大蟇先に在り小蟇後へに高歩み

蛇逃げて我を見し眼の草に残る

簗見廻つて口笛吹くや高嶺晴

槇柱に清風のを見つけたり

胡瓜歯に鳴り友情面にあり

避暑人に電燈這ひともる翠微かな