和歌と俳句

納涼 涼み

暗きより浪寄せて来る浜納涼 亞浪

路地裏を四条通のすゞみびと 夜半

工場の夜半のけむりや舟涼み 爽雨

広告の行燈通る橋すずみ 虚子

門毎の涼み床几や東山 虚子

病身をもてあつかひつ門涼み 虚子

妻の来ておしろい匂ふ涼みかな 草城

三條の橋暮れて行く床涼み 虚子

京伝も一九も居るや夕涼み 虚子

夕涼み門にも風のなかりけり 淡路女

納涼や水の都の灯しごろ 石鼎

納涼や夜の松江の橋いくつ 石鼎

ふところに薄句集や夕涼み 喜舟

月の出や幼きものゝ門涼み 喜舟

舟すずみ夾竹桃の暮れてより 秋櫻子

青きものくろずみゆけり夕凉み 草城

仰ぎよる温泉滝のにほふ涼みかな 爽雨

蠍座が出て寝るとせん星涼み 虚子

くらがりにかくるゝ如く門涼み 花蓑

たまきはるいのちともするすずみかな 蛇笏

世智辛き浮世咄や門涼み 虚子

人の情四囲の胸板夕涼み 友二

天龍のへりに椅子おく夕涼み 風生

前通る人もぞろぞろ橋涼み 虚子

橋涼み温泉宿の客皆出でて 虚子

夕浪の刻みそめたる涼を納る 風生

絲をひくごとく星とぶ涼みかな 万太郎

くらがりに涼める夫に近づきゆく 波津女

夜涼みの野犬吠えゐし時は過ぐ 波津女

左右の山暮れて相似る橋涼み 風生

納涼の映画渚が近過ぎる 波津女

怪談の昨日のつづき涼み台 虚子