和歌と俳句

皆吉爽雨

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

戸締りの老おくれ出る田植かな

夜まどゐや五色団扇の我は青

納涼やすでに尾花の淀堤

その中にあがる朱竿やの渓

句をとむる堂の灯はある涼みかな

かしこさや喜雨の木の間をさがり巫女

ま二つにくづれ欠けたる牡丹かな

田掻馬茨はみちらし追はれけり

籐椅子や寺町なれば帰鴉の夕

水打つやみな夕とざす花圃の花

工場の夜半のけむりや舟涼み

梅雨の道傘へ入りきてをしふなり

蚊の路地の勤め帰りとなりにけり

旅の路日覆の書肆にはひりけり

門川に囮の桶やの宿

蚊帳を吊る影ありければ道を問ふ

鵜の宿の縁下にある艪櫂かな

遊船やまどろみ覚めて帆あげあり

座をかはりあうて眺めや遊び舟

ほぐれ散る苗もありつゝ投げにけり

膝ついて袋かけあふ夫婦かな

客僧の噛みこゝろむる新茶かな

釣り暮るゝ人を呼びをり鮎の宿

棹しづく右し左しあそび舟

鵜匠にも鵜にも昼蚊帳たれにけり