戸締りの老おくれ出る田植かな
夜まどゐや五色団扇の我は青
納涼やすでに尾花の淀堤
その中にあがる朱竿や鮎の渓
句をとむる堂の灯はある涼みかな
かしこさや喜雨の木の間をさがり巫女
ま二つにくづれ欠けたる牡丹かな
田掻馬茨はみちらし追はれけり
籐椅子や寺町なれば帰鴉の夕
水打つやみな夕とざす花圃の花
工場の夜半のけむりや舟涼み
梅雨の道傘へ入りきてをしふなり
蚊の路地の勤め帰りとなりにけり
旅の路日覆の書肆にはひりけり
門川に囮の桶や鮎の宿
蚊帳を吊る影ありければ道を問ふ
鵜の宿の縁下にある艪櫂かな
遊船やまどろみ覚めて帆あげあり
座をかはりあうて眺めや遊び舟
ほぐれ散る苗もありつゝ投げにけり
膝ついて袋かけあふ夫婦かな
客僧の噛みこゝろむる新茶かな
釣り暮るゝ人を呼びをり鮎の宿
棹しづく右し左しあそび舟
鵜匠にも鵜にも昼蚊帳たれにけり