和歌と俳句

金魚

金魚売

若葉さす市の植木の下陰に金魚あきなふ夏は来にけり 子規

からたちの花のほそみち金魚売 夜半

無職夫妻宵早く金魚買ひに出づ 

幾重ね金魚の桶をひらきけり 茅舎

水を大事に摺足の金魚売 不死男

金魚売露地深く来て汗拭ふ 楸邨

金魚売る鉢町中の地面透き 誓子

一本の道を微笑の金魚売 静塔

金魚屋の来し町角の昔めき 立子

金魚玉 金魚鉢

二つ買うて夫婦としたり金魚玉 石鼎

金魚玉三階の軒に吊しけり 茅舎

大阪の屋根に入る日や金魚玉 櫻坡子

金魚玉隣へ贈り退院す 播水

消えぬべき月の光や金魚玉 万太郎

月さすや金魚居らざる金魚鉢 草城

金魚玉天神祭映りそむ 夜半

金魚玉見てゐて思ひ遠きかな 波津女

なにも居ぬごときが時の金魚玉 青畝

水替へて鉛のごとし金魚玉 蛇笏

深窗に孔雀色なる金魚玉 蛇笏

母と子のひとつうれひや金魚玉 淡路女

子とあれば我が世はたのし金魚玉 淡路女

金魚玉にうつることあり風の木々 立子

水道の口壁にあり金魚鉢 杞陽

一杯に赤くなりつつ金魚玉 虚子

苔庭の夜あさき雨に金魚玉 蛇笏

金魚玉空しき後の月日かな 虚子

金魚玉朝一点の煤うかぶ 波郷

けんらんと死相を帯びし金魚玉 鷹女

宝石となる一瞬の金魚玉 青畝

金魚鉢に映る小いさき町を愛す汀女