和歌と俳句

高浜虚子

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船にのせて湖をわたしたる牡丹かな

紫陽花や田舎源氏の表紙裏

蚊帳吊りて草深く住み果つるかも

夏草に下りて蛇うつ烏二羽

葭戸はめぬ絶えずこぼれ居る水の音

白扇や漆の如き夏羽織

夏の月皿の林檎の紅を失す

菖蒲剪るや遠く浮きたる葉一つ

傾きて太し梅雨の手水鉢

夕鰺を妻が値ぎりて瓜の花

島と陸延びて逢はずよ雲の峰

我を指す人のをにくみけり

玉蟲に殖えて淋しき衣裳かな

石一つ震ひ沈みゆく清水かな

夏痩の頬を流れたる冠紐

寝冷せし人不機嫌に我を見し