和歌と俳句

田植え

風おちて静かな田植月夜かな 普羅

蹄鉄かへて馬があるけり田植風 普羅

田植唄和尚をかしく作りなし 喜舟

田植笠田舟押すとは見ゆるかな 喜舟

田植唄もうたはず植ゑてゐる 山頭火

水田青空に植ゑつけてゆく 山頭火

空が人が田植はじまつてゐる 山頭火

親も子も田を植ゑる孫も泥をふむ 山頭火

田植べんたうはみんないつしよに草の上で 山頭火

七日ゐて七日の晴や田植時 石鼎

鬣を剪りし仔馬や田植時 石鼎

ときをりの人聲の田を植ゑ去れり 汀女

笛吹のながれをひきて田を植えぬ 辰之助

駅の名を少女は知らず田を植ゑぬ 楸邨

ここでもそこでも馬を叱りつつ田植いそがしい 山頭火

降つて降つていつせいに田植はじまつた 山頭火

志摩の田は岩のちらばる田植かな 爽雨

田植笠竝びかねたる如くなり 虚子

曇り来て田植の笠も曇りけり みどり女

飴売が太鼓をたたく田植かな 青邨

雨上りみな田植笠畦に置き 立子

田植どき夜は月かげ田をわたり 波郷

田植時鳴海の里は絞り干す 花蓑

田植蓑重きを今日もまとひ出づ たかし

瞳とぢて蟇の子とぶや田植どき 耕衣

国中の田植はじまる頃なりし 虚子

田植笠紐結へたる聲となる 汀女

田を植うる白き衣をかかげつつ 虚子

信濃路や田植盛りを雲さわぎ 亞浪

小墾田の址の田植うる或は立ち 槐太

借りて乗る田植よごれの自転車に 蕪城

みめよくて田植の笠に指を添ふ 誓子

田植見に西蒲原に来し我等 虚子

おもはざるむかしがたりや田植時 秋櫻子

行人は吾のみ田植始まれり 誓子