和歌と俳句

杜若 かきつばた

よりそひて静なるかなかきつばた 虚子

紫や昼の色なる杜若 石鼎

家ちかく真菰の中の杜若 秋櫻子

月影や門の小溝の杜若 石鼎

降り出して明るくなりぬ杜若 青邨

こけかゝる一札映り杜若 泊雲

花びらの吹かれまがりて杜若 立子

水田たたへようとするかきつばたのかげ 山頭火

しぼんだりひらいたりして壺のかきつばた 山頭火

かきつばた咲かしてながれる水のあふれる 山頭火

湯あがりの、かきつばたまぶしいな 山頭火

活けられて開く花でかきつばた 山頭火

大夜宴主卓の花は杜若 虚子

白き壺かきつばた高く咲かせたり 秋櫻子

むかし業平といふ男ありけり燕子花 淡路女

杜若とはの寝顔の浄らかに 鴻村

杜若濡鼠の子叱り抱き 茅舎

一院の静なるかな杜若 虚子

杜若雨に殖えさく高欄に 久女

杜若映れる矼をまたぎけり 久女

杜若蕗の中なる山家かな 素十

垣そとを川波ゆけり杜若 秋櫻子

燕子花鴟尾の金色射すところ 槐太

細長き床几新らし杜若 虚子

燕子花書院は池に影正し 秋櫻子

十字架を負ひ蜘蛛の囲よ杜若 青畝

かきつばた旗幟同じき明るさに 草田男

さざなみや弥陀階前の燕子花 秋櫻子

繭倉にいまは繭なし燕子草 秋櫻子

顎老いてひとひらの杜若かな 耕衣