蓬莱や東にひらく伊豆の海
海わたる日は橙の上にあり
初場所やまだ序の口の日矢さして
アヴェマリア鐘鳴りいづる初芝居
大見得に毛抜立つたる麗かな
夜雨はれし奇特あらたや達磨市
白鳳佛賽受けたまふ達磨市
春蘭や細瀧かかる十余丈
磯魚の五彩の春や舟生簀
若布刈舟出でて飛燕の土佐泊
渦群れて暮春海景あらたまる
燕来し簷や浄瑠璃人形師
行春や娘首の髪の艶
更けし夜は瀬音のみなり蜆汁
さざなみや弥陀階前の燕子花
紫雲英田を裾に敷き立つ燕子花
春過ぎていづこかのこる市の跡
端午開扉す怒りたまへる秘佛なり
金雀枝や日の出に染まぬ帆のひとつ
日焼男の諸声めぐる船出唄
魚島の大鯛得たり旅路来て
松の花波寄せ返すこゑもなし
鳥寄せをきく扮装や梅雨の闇
鳥寄せや不二もうかべる夜半の月
ひぐらしやここにいませし茶の聖
濁流に風さへ吹けり草ひばり