寒雷の後の日の出に海荒し
座の紋の梅も匂ふや初芝居
柝の入りてひきしまる灯や初芝居
刈芝の四隅の春や遊蝶花
木瓜の荷を解く紅白や植木市
黄塵にひと日疲れて手をあらふ
甲斐駒の雲間の雪や山ざくら
奥木曽の屋根石にをり初燕
御岳の雲来てつつむ種下ろし
種蒔くや残雪くもる麻利支天
うぐひすや老ひしが多き開拓者
芋水車掛けし流も温みけり
木曽馬の牧の跡あり蕨萌ゆ
夜櫻や仙丈ケ岳にひかる雪
海棠や旅籠の名さへ元酒屋
降りいでて廂下の牡丹まだ濡れず
幕あきしけはひに牡丹くづれける
牡丹咲き雪代はしる湯檜曽川
瀧に濡れ咲かむとすなり山ざくら
山吹にさす月ありて月うすし
山吹に照る月更けて月ばかり
尿前のふるみち失せぬ雨蛙
蕗生ひし畦に置くなり田植笠
余り苗乗せてきそへり田植川
一面の古鏡たふとし朴の花