和歌と俳句

水原秋櫻子

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山紅葉一径雲に到るらし

破蓮を打つ雨なれば音あらき

鳴くや明治の洋燈磨かれて

豊年やくさぐさ並ぶ臼と杵

散柳窓を飛ぶなり蓑ぼつち

林檎売り雪来れば穿く雪沓か

佳き石のあればさざんか散りおほふ

湖の上を疾風来るなり神迎

眠る山湯釜を蒼く湛へけり

普賢寺村茶どころにして茶の咲ける

千年経て御佛います冬紅葉

やや寒の十一面や菊菩薩

時雨れては裾曲の稲か見ゆるのみ

七十路は夢も淡しや宝舟

寒餅は網目匂はせ焼くべかり

早梅や暮れてもきたる四十雀

まねく笛まねく太鼓や午まつり

接待の前垂そろふ午まつり

おぼえある町なり辻に雪だるま

敷く雪の中に春置くヒヤシンス

むらさきの眉目笑へり遊蝶花

上り簗雨の篁うちかぶり

山吹や老師九十の普茶料理

梨咲くや谿吹きあぐる風匂ひ

鐘撞けばゆらぐ榛名の大