和歌と俳句

夜桜

夜桜や大雪洞の空うつり 子規

夜櫻や用ありげなる小提灯 虚子

夜櫻や紅提灯のもえて落つ 虚子

夜櫻や芸者幇間の六歌仙 虚子

夜桜や遠ざかり来て顧る 風生

夜桜の一枝長き水の上 素十

夜桜や篝の煙ほそぼそと 素十

夜桜やここより見えぬ東山 素十

夜桜へ出てしまひたる下宿かな 播水

夜桜や港の船の見ゆる園 誓子

夜桜の提灯売れてつゞきけり 爽雨

夜桜に通りすがりの尼法師 淡路女

夜桜の瓦斯燈の蔭に見しは犬 楸邨

夜の桜四辺に黒き松ねむる 楸邨

夜の桜うしろに暗き崖懸る 楸邨

夜ざくらの雪洞禰宜の庭にまで 櫻坡子

夜桜ににぎはふ恋の神籤かな 櫻坡子

夜桜となりはて星がきらびやか 草城

夜櫻の更くればまはる夜番かな汀女

夜桜やうらわかき月本郷に 波郷

夜桜や遠くに光る潦 みどり女

夜桜のどよめきあとに遠く来し 立子

夜桜をもどりし門の大桜 立子

夜櫻の道を教へて行かせつつ 汀女

夜桜や汽車の白煙ふんだんに 誓子

一杯のビールに酔いひて夜桜へ 立子

炎えている他人の心身夜の桜 三鬼

夜櫻や仙丈ケ岳にひかる雪秋櫻子