和歌と俳句

蝌蚪 おたまじゃくし

風吹いてうちかたまりぬ蛙の子 鬼城

川底に蝌蚪の大国ありにけり

水底に蝌蚪の動乱してやまず

蝌蚪の水に煙草火投げて訪ひにけり 禅寺洞

茂吉
かへるごは水のもなかに生れいでかなしきかなや浅岸に寄る

茂吉
まんまんと満つる光に生れゐるおたまじやくしの目は見ゆるらむ

茂吉
かへるごの池いちめんになりたらば術あらめやと心散りをり

茂吉
水際にはおたまじやくしの聚合の凝り動かねば夕さりにけり

赤彦
護国寺の池に捕り来しおたまじゃくし動き止まざるを子らと見て居り

棒切れをつつめる垢や蝌蚪の水 虚子

落椿に根のごと生えて蝌蚪うごく 石鼎

富士高くおたまじゃくしに足生えぬ 石鼎

野の草に燃ゆる思ひや蛙の子 石鼎

赤彦
あな愛しおたまじやくしの一つびとつ命をもちて動きつつあり

跫音におどろく蝌蚪や水浅し 淡路女

蛙子の風ある方へ泳ぎけり 石鼎

湧く水を遠く過りぬ蛙の子 石鼎

天日のうつりて暗し蝌蚪の水 虚子

雨霽れの水の匂ひや蝌蚪の池 淡路女

蝌蚪の水わたれば仏居給へり 秋櫻子

日輪や蝌蚪の水輪の只中に 秋櫻子

遊園や鴛鴦も浮べる蝌蚪の水 秋櫻子

両の掌にすくひてこぼす蝌蚪の水 虚子

吹きかはる微風に浮かむ蛙の子 石鼎

蝌蚪生れて畝火の溝におよぐなり 誓子

蝌蚪一つ鼻杭にあて休みをり 立子

竹落葉ひらりと蝌斗の水の上 誓子

流れ行く蝌蚪や再び横ころげ 立子

尾を振つて流され行くや蝌蚪一つ 立子

古水にうじゃうじやとゐる蛙の子 草城

たなぞこにひちひち跳ぬる蛙の子 草城

放たれてぶるぶるおよぐ蛙の子 草城