雨の中に立春大吉の光あり
枯枝に初春の雨の玉圓かな
野を焼いて帰れば燈下母やさし
春雪を拂ひて高し風の藪
水温む利根の堤や吹くは北
駕二挺重なり下る雉子の谷
本尊にと持たせよこしぬ草の餅
国難や本尊の前の草の餅
春雷や大玻璃障子うち曇り
板踏めば春泥こたへ動きけり
腐れ水椿落つれば窪むなり
藤の根に猫蛇相搏つ妖々と
雪解の雫すれすれに干蒲団
一匹の鰆を以てもてなさん
いただきを蜘がいためぬ沈丁花
群集する人を木の間に御忌の寺
道急になれば春水迸る
鉢伏に雲のかかれば春の雨
暁の春の御あかし消えんとす
春の灯をおつかぶさりてともしけり
春の潮先帝祭も近づきぬ
春寒や脱ぎつ重ねつ旅衣
うち晴れて鶯に居る主かな
さしくれし春雨傘を受取りし
早蕨を誰がもたらせし厨かな
松の間の大念仏や暮遅き
天日のうつりて暗し蝌蚪の水
囀の大樹の下の茶店かな