鶯は隣へ逃げて藪つづき 漱石
海見えて鶯も来ぬ谷のさま 石鼎
晶子
百艘の船はあれどもほのかなる灯も見がたくてうぐひすぞ啼く
寝足りし朝よ谷鶯の啼きたえず 山頭火
鶯やわかれをつぐる奥納戸 石鼎
鶯や香焚くひとの眉静か 麦南
鶯や草鞋を易ふる峠茶屋 漱石
鶯や藪くぐり行く蓑一つ 漱石
晶子
隣なる不開の門の裏見つつ二階に病めばうぐひすの啼く
鶯の鳴き初めし昼は鴉の木 碧梧桐
鶯や豆腐沈みし水の底 茅舎
ほがらかに鶯啼きぬ風の中 草城
鶯や朝の雨ふる小篁 草城
うぐひすのふたこゑなきぬゆふまぐれ 草城
鶯の鳴く中叩く魚板かな 喜舟
晶子
朝より二月の春のくれなゐの太陽の子のうぐひすぞ啼く
迢空
家ふえてまれにのみ来る鶯の、かれ 鳴き居りと、兄の言ひつつ
鶯は篁くゞりぬけけらし 泊雲
玄関へ奥の鶯の谺かな 泊雲
鶯の谺聴きゐる障子内 花蓑
鶯や高原かけて日が当る 石鼎
鶯の谺す淵を覗きけり 花蓑
憲吉
朝の池に靄立つひさし松原のうぐひすの声は啼きてととのふ
うち晴れて鶯に居る主かな 虚子
崖腹に鶯の啼く干潟かな 花蓑
鶯の声を限りや夕日山 石鼎
高らかに鶯啼けり杉林 普羅
鶯の日に光りつゝ枝うつり 石鼎
鶯や鳥居の内の旅籠町 月二郎
鶯や雨やむまじき旅ごろも 秋櫻子
鶯や舟行く淵の底は岩 秋櫻子
鶯や前山いよよ雨の中 秋櫻子
前山や初音する時はろかなり たかし