ふりあふぐ黒き瞳やしやぼん玉
落凧を引き寄す草の暮色かな
しろじろと蝶の舞ひ出し杉生かな
夕蛙叡山實に淡いかな
暮れ悩む海の明るさ鳥帰る
佛暁の井戸軋らすや鳥帰る
さくら鯛砂へ刎ねたるいさぎよさ
ほがらかに鶯啼きぬ風の中
鶯や朝の雨ふる小篁
うぐひすのふたこゑなきぬゆふまぐれ
つばくらに水音高く濯ぎけり
薄荷酒に口のすずしさつばくらめ
猫の子のつくづく見られなきにけり
庖丁の含む殺気や櫻鯛
夕晴や寒き木の芽のうすみどり
白梅に斜めなる日のあたり侘ぶ
咲き満ちてほのかに幽し夕椿
落椿ころがり侘びて根のほとり
松風に吹かれて白き櫻かな
花過ぎて松翠もとの如くなり
花更けて篝落しぬ月あかり
浅き夜ややがての月に花静か
満月の照りまさりつつ花の上
高々と雨意の木蓮崩れけり
木蓮の吹かれ吹かれてかがやける