酔ざめや大碗の茶と桜餅
松風のたかぶつてゐる春の山
春愁の妻に紅茶をつくらしむ
春愁やひとりの窓のゆふまぐれ
照りわたり浅からぬ夜の春の月
春の月うすき帷は影ばかり
忽ちに月をほろぼす春の雷
春の水大つくばひに日を経ぬる
みちのべに春蘭花をいとなめり
曼荼羅に春昼の燭のあがりける
立ち出でて穢土のうららの紅椿
ぼうたんの芽の茜より春景色
吹き落ちて松風さはるも牡丹の芽
日おもての花ははなやか藪椿
永き日や晴れてくもらぬ塔二つ
永き日を雙つの塔と暮らしけり
戻り路に塔の相寄る遅日かな
青空にひと枝咲きぬ初ざくら
初花に月のかげ添ふきのふけふ
花冷えのともし灯ひとつともりけり
からかさや花に停れば花の雨
篁の穂の光含み花ぐもり
ひとすぢに山坂垂りて遅日かな
紅椿いづれの花も疲れたる