和歌と俳句

日野草城

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物種のひとつびとつのいのちかな

種蒔やおもひにゑがく花美し

こんもりと男山あり蓬摘

猫の恋老松町も更けにけり

しげしげと子猫にながめられにけり

猫去つて猫の子二つ残りけり

置かれたるところを去らぬ子猫かな

や山川の瀬のしろじろと

の啼かぬ日はなし山ごもり

帰る鳥点々として雲表に

夕月のはやばや出づる雲雀かな

桜鯛醜の魚等にかゞやける

古水にうじゃうじやとゐる蛙の子

たなぞこにひちひち跳ぬる蛙の子

放たれてぶるぶるおよぐ蛙の子

あけぼのの白き雨ふる木の芽かな

八ツ手の芽解けてちひさき八ツ手の葉

白梅の花はつはつに雨さむし

あちこちに障子灯りぬ梅林

咲いて酒のにほひや神の庭

蒼古たる松のおもての花桜

老桜人のとよみに咲き倦める

花篝つぼみの花に宵のほど

常磐木の照らされてゐる花篝

ぱちぱちと火華の高き花篝