物種のひとつびとつのいのちかな
種蒔やおもひにゑがく花美し
こんもりと男山あり蓬摘
猫の恋老松町も更けにけり
しげしげと子猫にながめられにけり
猫去つて猫の子二つ残りけり
置かれたるところを去らぬ子猫かな
鶯や山川の瀬のしろじろと
鶯の啼かぬ日はなし山ごもり
帰る鳥点々として雲表に
夕月のはやばや出づる雲雀かな
桜鯛醜の魚等にかゞやける
古水にうじゃうじやとゐる蛙の子
たなぞこにひちひち跳ぬる蛙の子
放たれてぶるぶるおよぐ蛙の子
あけぼのの白き雨ふる木の芽かな
八ツ手の芽解けてちひさき八ツ手の葉
白梅の花はつはつに雨さむし
あちこちに障子灯りぬ梅林
梅咲いて酒のにほひや神の庭
蒼古たる松のおもての花桜
老桜人のとよみに咲き倦める
花篝つぼみの花に宵のほど
常磐木の照らされてゐる花篝
ぱちぱちと火華の高き花篝